支笏湖ボート転覆事故
掲載日:2017.05.10
支笏湖のボート転覆事故についてのお話。
まずは被害者のお二人のご冥福をお祈りいたします。
被害者のお二人、そしてご家族は大変悲しく、苦しい思いをしたと思いますが、我々にできることはそれをしっかり受け止め、今後の安全啓発活動を行うという事に尽きると思っております。
これまでも支笏湖に拠点を置き、ツアーや講習等で支笏湖の風の話、フィールドに出る際にはこんな事に気を付けた方がいい等の安全啓発は行ってきましたが、フィールドを訪れる方すべてに情報を提供するのは難しくこのような事故となりました。
カヌーガイドというフィールドの安全を守る立場の人間として自分たちにももっとできることがあるのではないかと痛感しております。
今回のボート事故は2人とも死亡という最悪の結果であり、GWの水の恐ろしさを全国的に発信した事故となりました。
「予報は予報」であり、「未来予知」ではありません。
自然は実に気まぐれで一瞬で予想外の出来事が起こります。
自然の中で遊ぶことは過去の経験・データから現状を客観視し、その時々で適切な判断を下せるかどうかがカギとなります。
それは水の上であれ、山の中であれ同じことだと思っています。
今年のGWは非常に暖かく、国内で一番暖かいのが札幌。という日もありました。
支笏湖も5月4日、5日は暖かく25℃ほどになりました。がしかし、水温はまた別の話で基本的に外気温が上がったからと言って水温がすぐにあがるわけではなく、事故時の水温は+1度でした。
これはドライスーツ等のウェアリングをしていなければ5分もたない水温です。
今回の方々はボートを買ったばかりでそういった水温や気象、エスケーププランへの対策知識が薄かったと考えられます。
そして今回のキーでもある風。
ボート・カヌーの天敵は雨ではなく、風です。
風が強いと漕いでも進まず、波も高くなり、場合によってはボートはひっくり返ります。
データによると当日の瞬間最大風速12mとなっていますが
現場にいた私はもっと強かったように感じます。
結果論として「注意報」が出ていたのになぜ?と思うかもしれませんが、
注意報レベルは「注意する」という程度で、現にうちのツアーも注意報のみでの中止はしておりません。
当日の朝は恐ろしいほど湖面が穏やかでした。
地元民は「逆に恐ろしいね・・・」という話をしながら湖面を眺めていました。
この「逆に」という感覚が注意報や気象データを情報として頭に入れた上で経験や感覚的に出した「勘」だと思います。
注意報や警報が出ているから今日はやめるという判断ももちろん大事です。
ですが初めにお話しした通り自然は気まぐれでいつ状況が一変するかわかりません。
フィールドに出る際はあくまでデータはデータ、それに加え自分の目で見た感覚や雰囲気を大事にしてください。
自然の中に入るには知識(勉強)も技術(練習)も絶対的に必要です。
最後に支笏湖は札幌から近く国立公園内の国有地に位置する水質日本一のとても美しい湖です。
哺乳類・鳥類も豊富でカルデラ壁や火山地形はとても見ごたえがあります。
そんな魅力あふれるフィールドであるのとは裏腹に周囲40km、最大水深363mの
日本最北の不凍湖は低い水温と水深300mを超える深さからなる大きなうねり、
1000m以上の山からくる強い吹きおろしの風。
動力船規制の為湖上には人の姿も少なく何かあってもすぐに見つけてくれたり
救助にいくことが難しい国内のフィールドの中でも非常にリスクの高い湖であることは間違いありません。
GWも終わりこれから全国的にアウトドアシーズンとなります。
海・山・川どこにいくにも情報が少ない場合には専門的な知識を持つ方に相談し
アウトドア活動と楽しんでいただければと思います。